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ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

芳子は自分の室に戻った。食事を終って、茶を飲みながら、時雄は前からのその問題を語り続いだ。

「で、貴方はどうしても不賛成?」

「賛成しようにもしまいにも、まだ問題になりおりませんけえ。今、仮に許して、二人一緒にするに致しても、男が二十二で、同志社の三年生では……」

「それは、そうですが、人物を御覧の上、将来の約束でも……」

「いや、約束などと、そんなことは致しますまい。私は人物を見たわけでありませんけえ、よく知りませんけどナ、女学生の上京の途次を要して途中に泊らせたり、年来の恩ある神戸教会の恩人を一朝にして捨て去ったりするような男ですけえ、とても話にはならぬと思いますじゃ。この間、芳から母へよこした手紙に、その男が苦しんでおるじゃで、どうか御察し下すって、私の学費を少くしても好いから、早稲田に通う位の金を出してくれと書いてありましたげな、何かそういう計画で芳がだまされておるんではないですかな」

「そんなことは無いでしょうと思うですが……」

「どうも怪しいことがあるです。芳子と約束が出来て、すぐ宗教が厭になって文学が好きになったと言うのも可笑しし、その後をすぐ追って出て来て、貴方などの御説諭も聞かずに、衣食に苦しんでまでもこの東京に居るなども意味がありそうですわい」