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ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

時雄の胸に、ふと二人の関係に就いての疑惑が起った。男の烈しい主張と芳子を己が所有とする権利があるような態度とは、時雄にこの疑惑を起さしむるの動機となったのである。

「で、二人の間の関係をどう御観察なすったです」

時雄は父親に問うた。

「そうですな。関係があると思わんけりゃなりますまい」

「今の際、確めておく必要があると思うですが、芳子さんに、嵯峨行の弁解をさせましょうか。今度の恋は嵯峨行の後に始めて感じたことだと言うてましたから、その証拠になる手紙があるでしょうから」

「まア、其処までせんでも……」

父親は関係を信じつつもその事実となるのを恐れるらしい。

運悪く其処に芳子は茶を運んで来た。

時雄は呼留めて、その証拠になる手紙があるだろう、その身の潔白を証する為めに、その前後の手紙を見せ給えと迫った。

これを聞いた芳子の顔は俄かに赧くなった。さも困ったという風が歴々として顔と態度とに顕われた。

「あの頃の手紙はこの間皆な焼いて了いましたから」その声は低かった。

「焼いた?」

「ええ」

芳子は顔を俛れた。

「焼いた? そんなことは無いでしょう」

芳子の顔は愈赧くなった。