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とうくろうちそう

討九郎馳走

山本 周五郎

「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页

青空文庫

六

討九郎は大股に近寄り、差添を抜きながら、ぐっと相手の濡れた衿がみを取った。

六

大納言義直の行列が宿所を発したのは、その翌朝の八時であった。……家老、町奉行らは連尺町まで見送りに出たが、討九郎の姿はみえなかった。かくて行列は城下町をぬけ、畷道にかかったが、どうしたことかふいに乗物がとまってしまった。

「どうしたのだ」

義直の声で使番が走って行った、彼はすぐに戻って来た。

「申上げます、お供先の路傍に梟首がございますので、とりのぞくよう掛け合っております、いましばらく」

「……梟首だと?」

義直の顔色が変った。するとそこへ供頭がはせつけて来た。

「申上げます」

「なんだ」義直は身をのりだした。

「お行列みちすじに梟首がございますので、とりのぞくよう厳重に申し談じましたるところ、岡崎家臣兼高討九郎なる者まかり出で、大法を犯したる曲者の梟首なればとりのぞくことかなわず、たって所望なれば押し破って通られよと申し、鉄砲三十挺火繩をかけて動きませぬ、いかがつかまつりましょうや」

「兼高、兼高と申したか」義直は唇を噛んだが、「よい、そのままやれ」そして行列は動きだした。

畷道に高く梟首をかけ、徒士組三十人に鉄砲を持たせて、二人の番頭が警護していた。