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ろんごものがたり

論語物語

下村 湖人

「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页

青空文庫

「そうそう。顔渕のことはついうっかりしていた。もうそろそろ着くころだが、事情を知らないで、うかうかとわれわれの宿を探しでもすると、変なことになるかも知れないね。」

「用心深い男だから、滅多なことはあるまいと思うが……」

「それにしても、まさかこんな事があろうとは、夢にも思っていないだろうからね。」

「何とか方法を講じなくてもいいのか。」

「方法って、どうするんだ。」

「誰かこっそり城門の近くまで行って……」

「そんなことが出来るものか、こう厳重に取囲まれていたんでは。」

「いっそわれわれの方から、先方の隊長に懇談して見るのも一方法だね。」

「さあ、それも却って藪蛇になるかも知れない。」

門人たちは、口々にそんなことをいって、ざわめき出した。

それまで、一言も発しないで、腕組をしながら考えこんでいた閔子騫が、この時はじめて口を出した。

「顔渕はわれわれより智慧がある。先生もきっと、顔渕のためにわれわれが細工をすることを好まれないだろう。」

冉伯牛と仲弓の二人も、最初から沈默を守っていたが、閔子騫の言葉が終ると、いかにもそうだというように、深くうなずいた。すると子路がいった。