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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
立廻りになると下役は何うしても損だ。破れ物を持っているものだから、何うしても手加減をする」
「実際然うだよ。僕のところにしても」
「斯うと分っていたら、昨日打ん撲ってしまうんだったに」
「今更仕方がないよ」
「首になったって平気だけれど、なり方がひど過ぎた。あゝあゝ、譲歩するんじゃなかったになあ」
「そんな奴と知れていたら、僕だってこの前の時に玉砕を勧めているんだけれど」
「今日出勤さえしなければ、完全に勝っていたんだ。計略の裏をかいて笑ってやれたんだ」
と堀尾君は種々と場合を考えて見た。しかし後から出る智恵は何の役にも立たない。
「それよりも又口を探すことだぜ」
「もう厭になった」
「しかし暮に式を挙げるのに浮浪人じゃ困るだろう?」
「然うだね」
「道子さんは嘸吃驚することだろう?」
「それを頭痛に病んでいる」
「矢っ張り初めから穏かに出る方が宜かったんだなあ」
と清水君は大きい意味の簡便法を信仰していた。尤もそれでなければ養子なぞには入れまい。
堀尾君は家へ帰って手紙を認めた。一通は西本先生への詫状、もう一通は道子さんへの報告だった。西本先生とはこれで縁が切れてしまう。