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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
「さあ」
「君は去年の夏、奥田君の郷里へ遊びに行ったじゃないか? その時、僕のところへも寄れと言ったのに、切り詰めた日取だからって断ったぜ。しかし後から訊いて見ると、ひどいよ。奥田君のところに三週間もいた」
「おや/\」
「その三週間の中に何かあったろう?」
「多少はあったさ」
「それを話し給え」
「二週間いる中に道子さんが綺麗に見え始めたのさ」
「道子さんてのかい?」
「うむ」
「それから?」
「それ丈けさ」
「しかし三週間いたぜ。後の一週間の説明がついていない」
「二週間で帰る積りだったが、怪我をしたんだ」
「怪我? 何処を?」
「足を挫いたのさ。立つことに定めてあった朝、道子さんの大切にしていた九官鳥が逃げ出した。ロマンスといえば先ずあれだろうね」
「本式じゃないか? その九官鳥を捉えて来れば、君の誠意を認めるってんだろう?」
「いや、条件はない。しかし捉えて下さいと金切声を立てゝいる。羽を切ってあるから大丈夫だが、猫に取られる心配がある。二階だったよ。つい鼻先の庇に止まっている。御安い御用だ。僕は縁側の欄干を跨ぎ越して、ジリ/\近寄った。奴さん、首を傾げた丈けで逃げようともしない。