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てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

それが私としては本当だ。それが事実か事実でないか、どうして私以外の人に解ろう?

Tと別れて、山岡に歩み寄った私を見て、私の少い友達も多くの世間の人と一緒に、

「邪道に堕ちた……」

と嘲り罵った。けれど、彼等の中の一人でも、私のそうした深い気持の推移を知っている人があるであろうか?

久しい間の私の夢想は、かの谷中の話から受けた感激によって目覚まされた。私の目からは、もはや決して、夢想ではなく、彼の歩み入るべき真実の世界であった。その真実の前では、私は何ものにも左右されてはならなかった。こうして、私は恐らく私の生涯を通じての種々な意味での危険を含む最大の転機に立った。今まで私の全生活を庇護してくれたいっさいのものを捨てた私は、背負い切れぬほどの悪名と反感とを贈られて、その転機を正しく潜りぬけた。私は新たな世界へ一歩踏み出した。

「ようようのことで――」

山岡と私は手を握り合わされた。しかしその握手は、二人にとっては、世間の人に眉をひそめさすような恋の握手よりは、もっと意味深いものであった。やっとのことで私の夢想は、悲しみと苦しみと歓びのごちゃごちゃになった、私の感情の混乱の中に実現された。