轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
てんき
転機
伊藤 野枝
「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页
それが歩いてゆくにつれて、彼方にも此方にも、蘆間の水たまりや小高く盛り上げた土の上に、二つ三つと残っている。弔う人もない墓としか思われないような、その墓石の傍まで、土手からわざわざつけたかと思われそうな畔道が、一条ずつ通っているのも、この土地に対する執着の深い人々の、いろいろな心根が思いやられる。
泥にまみれて傾き横たわった沼の中の墓石は、後から後からと、私に種々な影像を描かせる。その影像の一つ一つに、私の心はセンティメンタルな沈黙を深めてゆく。あたりは悲し気に静まり返って、私の心の底深く描かれる影像を見つめている。亡ぼしつくされた「生」が今、一時にこの枯野に浮き上がってきて、みんなが私の心を見つめている。――その感じが私に迫ってくる。同時に今にもあふれ出しそうな、あてのない私のかなしみを沈ますような太いゆるやかなメロディが、低く強く私を襲ってくる。今までただ茫漠と拡がっていた黄褐色と灰色の天地の沈黙が、みるみる私の前に緊張してくる。けれど、やがてそれもいつの間にか消え去った影像と同じく、その影像を描いたセンティメントが消えてしまう頃には、やはりもとの何の生気もない荒涼とした景色であった。