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てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

こんな処から行けやしないでしょう?」

「ここから行くのさ、ここからでなくてどこから行くんだい?」

「他に道があるんですよ、きっと。だってここからじゃ、裸足にならなくちゃ行かれないじゃありませんか。」

「あたりまえさ、下駄でなんか歩けるものか。」

「だって、いくら何んだって道がないはずはないわ。」

「ここが道だよ。ここでなくて他にどこにある?」

「向うの方にあるかもしれないわ。」

私は少し向うの方に、小高い島のような畑地が三つ四つ続いたような形になっている処を指しながらいった。

「同じだよ、どこからだって。こんな沼の中に道なんかあるもんか、ぐずぐずいってると置いてくよ。ぜいたくいわないで裸足になってお出で。」

「いやあね、道がないなんて、冷たくってやりきれやしないわ。」

「ここでそんなこといったって仕様があるもんか、何しに来たんだ? それともここまで来て、このまま帰るのか?」

山岡は、そんな駄々はいっさい構わないといったような態度で、足袋をぬいで裾を端折ると、そのまま裸足になって、ずんずん沼の泥水の中に入って行った。私はいくらか沼の中とはいっても、せめてそこに住んでいる人達が歩くのに不自由しない畔道くらいなものはあるに違いないと、自分の不精ばかりでなく考えていたのに、何にもそのような道らしいものはなくて、その冷たい泥水の中