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きんぎょはしんでいた

金魚は死んでいた

大下 宇陀児

「宝石九月号」岩谷書店、1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 页

青空文庫

申立を拒否したとなつたら、それを強いて言わせる権限は警察にもない。訊問はこれ以上にはあまり進まなかつた。

第二の容疑者は、金属メッキ工場の技師兼重役であり、中内忠という工学士だつたが、この人物は、刈谷老人に高利の金を借りていて、かなり苦しめられていたはずである。訊問すると、案外にも老人のことを、借金の取立てがきびしくへんくつだが、面白いところのある人物だといつたし、また借金のことで、べつに怨恨など抱いてはいないのだと答えたが事実としては青流亭の女将と同じく、いつも夜になつてから老人を訪ねるのが常で、ある時、ひどくはげしい口調で、二人が門の前で口争いをしていたのをみたという、近所の人からの聞込みもないではない。彼は、人柄としては、まことに温和な風貌の分別盛りの紳士である。趣味がゴルフと読書だという。そして、井口警部との間に、次のような会話があつた。

「工場でやるメッキは、どんな種類のものですか」

「なんでもやります。小さなものでも大きなものでも」

「技術はとくに優秀だそうですね。むろん、電気メッキもやるのでしような」

「やりますよ」

「メッキの薬品は、どんなものを使いますか」