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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

「畜生ッ」

平次はさすがに唇を噛みました。あまりといえば、人をなめた手紙です。

「こいつをお雪坊の家へ投り込んであったんですよ。別に金が十両と手紙がついていて、名前はエテ三とあったようです」

「たしかにエテ三とあったのか」

「あっしが見たんだから間違いありませんよ。それくらいの字ならあっしも読めまさア」

「すると、斑組の首領は、猿三とか申三郎とかいうんだろう」

「役者みたいですね。女ならお猿とか、おえんとか」

「その手紙の文句を覚えているか」

「何んでも面倒臭いことが書いてありましたよ。一と息には読み下せそうもないような」

「仕様のない野郎だ。だから少しは四角な字も習って置け、――というと、俺は大層学がありそうだがね」

平次はそういって苦笑しながら出かける支度を始めました。

銭形平次は、八五郎の腑甲斐なさを責める気にもなれず、そのまま自分で佐久間町のお雪の家へ行きました。

相変らずの浮世小路で、世帯疲れのした母親と、不思議にピカピカする娘のお雪が迎えてくれます。

奉行の計らいで、窓から投り込まれた金をもらったところで、骨まで貧乏のしみ込んだ世帯が、急に明るく豊かになるわけではなく、旧態依然たる鼠の巣に、母親は手内職の玩具などを並べておりました。