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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

お楽と八五郎

「済まねえ、お銀さん。昨夜は女房の手前、ああでもいうよりほかになかったんだ。まあ勘弁してくんな」

「あれ、親分さん」

長火鉢の前へがっくり首を垂れる平次を、お銀は宙に押えたい衝動に駆られている様子です。それほど平次の態度は素直で、そしてお銀の態度は色っぽさに徹していたのです。

お楽と八五郎

「この辺にこんなしゃれた家があろうとは、夢にも思わなかったよ」

「まア、親分さん、――しゃれた家なんかじゃありませんけれど、お気に召したら、ちょいちょいお立ち寄り下さいませんか。女一人の世帯で、何処へ行っても白い眼で見られて、そりゃ心細いんですもの。銭形の親分さんの羽がいの下にいると思うだけでも、どんなに気強いか知れやしません」

お楽はしんみりとなります。お銀ほどのきりょうではないにしても、才はじけて小意気で、そのくせ何処か上品なところのある、一風変った魅力の持主です。

「漸くお燗が出来ました。さア親分さん」

お銀は銅壺から抜いた徳利を、器用に拭いて平次のところへ持って来ました。

少し居崩れて、片袖をくわえたポーズは、含んだ鼻声とともにたまらない媚態ですが、若い時は激しい労働でもしたらしく、匂うばかりの滑らかな顔に比べると、手はひどく荒れて逞ましさの目立つのが気になります。