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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
お蔵屋敷
お前はやはり明神下のお前の家に引籠っているがよかろう。諸方に顔を知られたお前が、この辺にウロウロしているのは宜しくない」
「左様でございましょうか」
「町方の仕事には限度がある。致し方あるまいな、平次」
「では、これでお暇を頂きます」
平次は静かに組屋敷を出ました。
そこから明神下の平次の家まで八五郎が腹を立てまいことか。
「チェッ、呆れて物がいえねえ。腐った羊羹どころか、邪魔だから手を引けだってやがる」
「まア、恐るな八、相手が悪いや。あんなに笹野様が仰しゃるんだから、俺は我慢をして引籠るが、お前は差支えあるめえ。俺の代りに八丁堀から尾張のお屋敷まで付いて行って、よく見張るが宜い」
平次の方策はせめてこれが精一杯だったのです。
お蔵屋敷
翌る六月一日、八丁堀組屋敷は早暁から門外を堅め、与力同心組子の数を尽して、真に鉄桶の人垣を作りました。その中にはいうまでもなく八五郎の長んがい顔も交っておりましたが、与力筆頭笹野新三郎の注意で、銭形平次の見えなかったのは一脈のさびしさでした。
正午刻(十二時)のお時計が鳴るのを合図のように、笹野新三郎役宅の玄関に立ったのは、尾州家のお使い、大橋要人、同じく津田孫太郎、同じく鈴木倉之進の三名でした。