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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

「――」

怪しい男の快弁にいい捲られたか、平次は黙ってそれを聴いております。

夏の陽は五重の塔の裾から暮れて、やがてこの肩のあたりも雀色の暮色に包まれるのでしょうが、その多勢を迎えに行った筈の八五郎は、まだ影も形も見せません。

「あんな子供騙しの判じものを書いて、大切な金の環まで添えてやればこそ、銭形の親分ほどの智慧者も、この五重の塔のてっぺんまでノコノコとやって来たろう。もっともその金の環は、唯じゃやらないよ。そいつはまだ使い途があるんだ。六つ目の金箱を隠して、唯の箱へ穴をあけて置いたら、銭形の親分は自分の智慧に負けて、金の環を箱の中へ入れてしまったろう、ハッハッハッ、ハッハッ、いや、こんなおかしいことは滅多にあるものじゃない。銭形の親分の前だが、そいつは種も仕掛けもない唯の箱だよ。鋸と鉞でも持出さなきゃ、容易に打ち壊されない箱だよ。その箱の中に落し込んだ金の環は、間違いもなくこっちのものさ――窓から投り出そうというのか、親分の眼はそういっているよ。宜いとも五重の塔の上から投り出せば、下の石塔か石畳にたたきつけられて間違いもなく打ち壊れるだろうから、下に隠れている仲間の者が、有難うとも何んともいわずに持って行くだけのことだよ。