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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

それに五郎八も女房もいやに落ちつき払っているじゃないか」

「そういえばそれに違いありませんが、あの野郎の外に、引窓から人間を一人ブラさげて抜け出せる奴はありませんよ」

八五郎はまだあきらめきれない様子です。

「隣りは湯屋だ、五郎八が本当に湯へ入ったか、きいてくれ」

「ヘエ」

八五郎は湯屋ののれんをまげの刷毛先でかきわけて入りましたが、間もなくぼんやりした顔で出てきました。

「どうだ八?」

「さっきちょいと来たそうですよ」

「ちょいと――というと」

「ほんの煙草二、三服ほどで、手拭をしめして帰ったそうです。もっとも湯の早い男で、何時でも烏の行水みたいだっていっていましたよ――」

「今度は両国の小屋だ」

二人は足を急がせました。東両国の明石一座の軽業小屋に着いたのは、もう戌刻(八時)過ぎだったでしょうか。

小屋の番人をしている、木戸番の半次をたたき起して、中に入るまでにはよい加減手間を取りました。

「木戸は酉刻(六時)に閉めるのが天下の定法だ。見物なら明日来てくれ」

平次と八五郎に、割れるほど裏木戸をたたかれると寝酒の入ったらしいろれつで、こんなことをいう半次です。

「お上の御用だ、開けろ」