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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

「八、黙って突っ立っていずに、少しは手伝えよ」

「ヘエ」

「こんな事をさせると、男は意気地がないな。平常は大きな面をしているが、いざ自分の手でご飯でも炊こうとすると、薪一本だって素直に言うことを聴かない」

平次はそう言って淋しく笑うのでした。

「姐さんはどうなったか、見当くらいはつきませんか」

八五郎はかまどの前にしゃがんだまま、自分の涙を薪の煙ぶるので誤魔化しているのでした。

「まるっきり見当もつかないよ。今度はおれも負星だ、あせればあせる程ヘマばかりする」

平次は苦笑いを絞り出しております。

「だれが一体姐さんをさらって行ったんでしょう」

「それはわかっているじゃないか」

「?」

「引窓から女一人を引っ抱えて逃げ出したんだ。力があって身軽で、恐ろしく胆の太い人間だ」

「お栄と言ったような」

「早まっちゃいけねエ、あの女は胆が太くて身軽だろうが、まさかお静を小脇に抱えて、引窓から屋根へ出ると言った芸当はむずかしかろうよ。現に八五郎は自分の身体一つを這い出すんでさえ、一と騒動やったじゃないか」

「すると親分、あの軽業師」

「明石の五郎八はくさいが、あれでもない。酉刻(六時)まで両国の小屋にいて、それから一と風呂浴びて一杯やっているところを、この眼で見ているんだから疑いようはないわけだ」