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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

堪忍して下さい、親分。でも、たった一つ、親分に見てもらいたいものがあります」

「――」

平次の返事も待たずに、お栄は何んの思い入れもなく、風呂場へでも行ったような無造作な態度で、紫陽花色の単衣の肌を押し脱ぐのでした。

凝脂に銀の粉を撒いたような、桃色珊瑚を薄絹で包んだような、それは実に素晴らしい肉体です。

「これを見て下さい」

お栄が指さしたのは、自分の胸でした。

こんもり盛り上がって美しい半円を描いた強力的な二つの乳房、桃色の乳首――そんな眩惑的な美しい宇宙の中に、朱色に彫った方五分ほどの賽ころの入墨、この中に真っ赤な一点は、まさに斑組の首領の目印でなくて何んでしょう。

「それは?」

「賽の目のピン、親分が長い間捜していた斑組の首領の目印じゃありませんか。もっとも私の父親、大橋伝中の二の腕にあったのは、世間並の黒い入墨でしたが、親の跡を継いだ私は、女らしく洒落て、乳と乳との間へ、朱で入墨させたのです」

「――」

「お里さんの死骸に彫ったのも、五郎八の腕に描いたのも、あれは皆んな定吉の悪ふざけで、私の知ったことじゃありません」

「――」

「八五郎親分は、この入墨が私の太股にあると思い込んでいる様子でしたよ――まさかねエ、親分」