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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
「あッ、それだッ」
「追っ駆けて見ましょうか」
「無駄だろうよ。前々から企んで逃げ出したに違げえねえ、――それより定吉の叔母さんに訊いてみよう、お前は先へ飛んで行ってくれ」
「ヘエ、それじゃ親分」
八五郎は親分と附合なくても宜いとなると、逸れた奔馬のように駆けて行きます。
それは柳原の土手でした。夜分は辻斬りと夜鷹を名物にしている物騒なところ、春の夜の朧の中に立って、平次は足弱のお里が来るのを、やや暫らく待たなければならなかったのです。
「小母さんだね」
「あ、銭形の親分、――私はびっくりしました、悪者かと思って」
お里は立ち留って、ハアハア息をきりながら、弱そうに胸を抱いております。
「変なことを訊くようだが、先刻本所から来た使いの男を、お前さんは知って居るのかえ」
「いえ」
お里の顔は、無智で、無関心で何んの疑惑の影もありません。
「少し気になることがあるんだ、――すると本所の家には、だれが病人の世話をして居るんだ」
「病人と申しても、足腰の起たないほどじゃございません。晩の食物の用意をして、あとはお隣りへ頼んで来ました」
「先刻の男はそのお隣りの人ではないのだね」