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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1952(昭和27)年3月~4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 页

青空文庫

「いやわかりますよ」伊兵衛はにこにこと云った、「――旅馴れている者はもちろん、このくらいの距離で駄賃がどれほどぐらい、子供でない限りはおよそ」

「無礼なことを云うじゃないか」べつの若侍が唾を吐いて云った、「駄賃の多寡ぐらい子供でない限りわかるって、われわれを子供扱いにするのか」

「つまらんつまらん」もう一人が云った、「――そんな問答は愚劣です、ゆきましょう岩野さん、ばかげてますよ」

「待って下さい、それはいけません」伊兵衛はかれらの前へまわった、「それは罪ですよ、みんな貧しい人たちなんですから、どうか駄賃を払ってやって下さい、お願いします」

「いやだ、そこをどいて貰おう」

岩野と呼ばれたいちばん年嵩の青年が、冷笑しながら顎をしゃくった。

「どうしてもだめですか」伊兵衛は念を押した。それから馬子たちのほうへふり返り、侍たちを指さして、「私はこういう人たちは嫌いです」

とむっとしたような声で云った。

「――刀を差していて弱い者いじめをするなんて、きっと本当の侍じゃなく偽者なんでしょう、それにお金も持っていないのかもしれませんよ」

「無礼者、偽侍と申したな」

唾を吐いた青年が喚いた。