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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页

青空文庫

七

七

「何、唄をお聞きになる、よろしい、やッつけましょう。節なしに……もっとも、節をつけては大変だ。……繰返して、聞いたから、そこ、ここうろぬきながら覚えています。――恋とサア、というくどきです。

恋とサア情のその二道は、やまと、唐土、夷の国の、おろしゃ、いぎりす、あめりか国も、どこのいずくも、かわりはしない。さても今度の心中話。それをくわしくたずねて見れば、加賀の城下のその片畔、能登屋仁平が、

これです、年とった亭主というのは。――

女房のおとせ、年は二十一愛嬌盛り……

ちょっと娘が気になりますね。鼓をうってる……年もちょうどそのくらい。

いつの頃から夫に忍び、その名岩島友吉こそは、年も二十六、やさがた生れ、きりょう好いのについ誘かされて、人目忍びて逢う瀬の数も、……

――阿漕が浦の度かさなれば、おさだまりで、たちまち近所となりのうわさ、これも定まる処です。

夫仁平は穏厚な生れ、かっと燃立つ胸なでおろし、それが素振は顔へも出さず……

いいか、悪いか、分りませんが、金沢ものだ、仕方がない、とにかく杯を合せましょう。で、何しろ、かように親類縁者までの耳へ入るようになっては、世間へ済まぬ。