轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
「ああ月が出た。」
と壁の胡瓜を見たんですから、ちらつくどころか、目も磨硝子で、ゆがんでいた。
処へ、ざっと雨が来ました。土間の鉢植が、土と一所に湿っぽく濡々と香う。
「お孝や、いいんだよ。私がお送り申すから。」
すぐ傍で――いま、つい近い自動車まで、と傘を手にして三和土へ出た娘を留めて――優しい声がすると、酒の勢で素早く格子戸を出た、そのすぐ傍です。切戸が一枚、片暗がりにツイと開く。鉢植でもあろうと思う、細い柳の雨に搦んで、細い青々とした、黒塀へ、雪が浮いたように出たんです。袖に添えた紺蛇目傘がさっと涼しい、ろくろの音で、
「さあ、どうぞ。」
一かげり翳った下へ、私は頭は光らないが、小さな蛍のようにもう吸込まれた。送って出たお孝が紛れ込むように、降り来る雨に、一騒ぎ。そこらがざわめく人の足音、潮時の往来の影。その賑な明るい燈の町へ向わずに、黒塀添いを傘で導く。
死出の山辺の灯一つ見える、一つ灯に松ただ一つ、一本松こそ、場所屈竟と、頃は五月の日も十四日、月はあれども心の闇に、迷う手と手の相合傘よ、すぐに柄もりの袖絞るらむ……
被布の抜衣紋で、ぐたりとなった、尼婆さんの形が、散らかった杯盤の中に目に見えるようで、……二階でまだ唄っている。