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ゆき

雪

中谷 宇吉郎

「雪」1938(昭和13)年 11月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页

青空文庫

固体の一番小さいものといっても、例えば針の先とかほこりの粒子とかいう程度の即ち高倍率の顕微鏡で見える位のものは、分子の数からいえば何億兆という莫大な数字を以て現わさねばならないものである。しかし大気中には特に上層にはそれら地上の塵埃よりも桁ちがいに小さい塵が無数に存在しているので、その大きさは分らないのであるが、大体分子が何万とか何百万とか集った程度のものである。これらの塵は空気コロイドともいうべきものである。大気の上層で雪の核になる塵というのはこの種のものであろうと思われる。

大気中には、このような細塵が、如何なる場所、如何なる時にも充満している。到る処にそんなに塵が一杯にあっては、われわれの生活に差支えがありはしないかと考えられるかも知れないが、そんなことはないようである。先にも述べたように、それは非常に小さいもので、恐らく、われわれが一口に空気といっているものは、この細塵を沢山含んだ空気のことなのである。

この細塵は太陽の光との合奏によってわれわれに青空を与えている。もしも空気中にこの種の細塵がなかったなら、われわれは青い空を見ることが出来ないのである。