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しゃべりすぎる

饒舌りすぎる

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页

青空文庫

しづが十歳くらいのときから土田正三郎は知りあっていたが、好きだという感情がめざめると、これまた十太夫を同席させずにはいられなくなった。半分はしづを見せる気だったろう、いくらかは自慢したかったとも云えるが、十太夫は一と眼でしづにのぼせあがってしまい、十太夫がのぼせあがったことを土田正三郎も感じ取ったのであった。また鉢合せだ、と二人はお互いに思ったが、こんどは譲らないぞ、とはらをきめたことも一致していた。

――二十歳になったら嫁に貰おう、おれは小野の当主だから、早く身をかためなければならないんだ、と十太夫は思った。

――妹が死んでおれは一人息子だ、と土田は土田で思った。早く嫁を貰って親たちを安心させなければならないからな。

二人ともまず彼女の心を掴もうとした。しづの気持をしっかり掴むほうが勝ちだ、縁談はそれからのことだと思い、かれらなりにいろいろ努力をした。もちろん十太夫は勤めのほかに道場での稽古があったし、土田正三郎は奉行職記録所へ勤務の命が出たから、努力をした、というのはおもに主観的な意味で、実際にこれこれのことをした、という実績はあまりなかったようだ。