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しゃべりすぎる
饒舌りすぎる
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页
八
なかったのか、わけを話していただけませんでしょうか」
土田正三郎はしづの顔を見た。
八
しづは微笑しているのではなかった。かすかに赤らんだその顔には、おそれと期待と、好奇心とがいりまじって、しかもそれをあらわすまいとする努力が、微笑しているような印象を与えたのであった。
「過ぎたことですが、人には知られたくないのです」と土田は空へ眼をやりながら静かに云った、「あなたは秘密を守ってくれますか」
「はい」しづは力づよく頷いた。
土田正三郎は履物の爪先で、地面に散っている落葉を掻きわけた。ひっそりとした墓地の中で、落葉の触れあう乾いた音が、おどろくほど高く聞えた。
「十太夫は私に、道場の師範役を継がせるつもりでした」と土田は話しだした、「――かなりまえからのことで、私は相手にしなかったが、彼は幾たびも繰り返し、飽きることなく私をくどいたものです、師範の次席には安川大蔵がいるし、安川は師範として充分の腕をもっていました、十太夫はどういうわけかそれを認めようとしません、そのうちに、――彼はあなたを娶りました、安川の妹であるあなたをです」
しづの顔がひき緊まり、その眼はなにかをさぐるように、土田の云う言葉の裏にあるものをさぐり当てようとでもするように、熱心に土田の表情を見まもった。