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しゃべりすぎる

饒舌りすぎる

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页

青空文庫

七

と口を尖らし、安川と三人で話すことがあるから、みんなちょっと遠慮してくれ、と云った。

「話はあとだ」と土田はやわらかに拒絶した、「雨が降ったら傘をさす、病気になったら医師の指示にしたがわなければならない、たまには人の意見も聞くものだ」

「雨が降ったらだって、ふん、饒舌り過ぎるぞ」十太夫は救いがたいと云わんばかりに首を振り、眼をつむった、「――土田の悪い癖だ、おまえはいつも饒舌り過ぎるぞ」

土田正三郎は医者の顔を見た。桂慈石は無表情のまま、十太夫の胸に当てた濡れ手拭を取り替えた。軽い症状ではないという意味か、いまは見当がつかないという意味か、どちらにせよ土田の眼に答えるようすはなかった。

「病気のときぐらいおとなしくするものだ」と土田は十太夫に云った、「――どこか痛むのか」

「話しかけないで下さい」と医者が云った。

十太夫は口の中で「それみろ」と呟き、白っぽい唇に微笑をうかべた。

七

十太夫はそのまま道場で一夜をすごし、明くる日の午後に自宅へ帰った。土田正三郎も朝まで側にいたが、医者も付きっきりだし安川大蔵もいたので、十太夫と二人になる機会はなかった。医者も二人のことは知っているから、話をする隙を与えないように、絶えず気を配っていたし、土田もそれを察したように、なるべく十太夫を見ないようにしてい、夜が明けて十太夫が