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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

六

ただ挨拶をしたばかりの男なら、私は実のところ、打棄っておいたに違いはないが、快からぬ人と思ったから、そのままで見棄てるのが、故とするようで、気が責めてならなんだから、」

と宗朝はやはり俯向けに床に入ったまま合掌していった。

「それでは口でいう念仏にも済まぬと思うてさ。」

六

「さて、聞かっしゃい、私はそれから檜の裏を抜けた、岩の下から岩の上へ出た、樹の中を潜って草深い径をどこまでも、どこまでも。

するといつの間にか今上った山は過ぎてまた一ツ山が近いて来た、この辺しばらくの間は野が広々として、さっき通った本街道よりもっと幅の広い、なだらかな一筋道。

心持西と、東と、真中に山を一ツ置いて二条並んだ路のような、いかさまこれならば槍を立てても行列が通ったであろう。

この広ッ場でも目の及ぶ限り芥子粒ほどの大さの売薬の姿も見ないで、時々焼けるような空を小さな虫が飛び歩行いた。

歩行くにはこの方が心細い、あたりがぱッとしていると便がないよ。もちろん飛騨越と銘を打った日には、七里に一軒十里に五軒という相場、そこで粟の飯にありつけば都合も上の方ということになっております。