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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
十八
)と意味もないことを大笑して、親仁は厩の方へてくてくと行った。
白痴はおなじ処になお形を存している、海月も日にあたらねば解けぬとみえる。」
十八
「ヒイイン! しっ、どうどうどうと背戸を廻る鰭爪の音が縁へ響いて親仁は一頭の馬を門前へ引き出した。
轡頭を取って立ちはだかり、
(嬢様そんならこのままで私参りやする、はい、ご坊様にたくさんご馳走して上げなされ。)
婦人は炉縁に行燈を引附け、俯向いて鍋の下を燻していたが、振仰ぎ、鉄の火箸を持った手を膝に置いて、
(ご苦労でござんす。)
(いんえご懇には及びましねえ。しっ!)と荒縄の綱を引く。青で蘆毛、裸馬で逞しいが、鬣の薄い牡じゃわい。
その馬がさ、私も別に馬は珍しゅうもないが、白痴殿の背後に畏って手持不沙汰じゃから今引いて行こうとする時縁側へひらりと出て、
(その馬はどこへ。)
(おお、諏訪の湖の辺まで馬市へ出しやすのじゃ、これから明朝お坊様が歩行かっしゃる山路を越えて行きやす。)
(もし、それへ乗って今からお遁げ遊ばすお意ではないかい。)
婦人は慌だしく遮って声を懸けた。
(いえ、もったいない、修行の身が馬で足休めをしましょうなぞとは存じませぬ。