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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
十五
)
(ええ、それでございます、酷い目に逢いました。)
思い出してもぞッとするて。」
十五
「婦人は驚いた顔をして、
(それでは森の中で、大変でございますこと。旅をする人が、飛騨の山では蛭が降るというのはあすこでござんす。貴僧は抜道をご存じないから正面に蛭の巣をお通りなさいましたのでございますよ。お生命も冥加なくらい、馬でも牛でも吸い殺すのでございますもの。しかし疼くようにお痒いのでござんしょうね。)
(ただいまではもう痛みますばかりになりました。)
(それではこんなものでこすりましては柔かいお肌が擦剥けましょう。)というと手が綿のように障った。
それから両方の肩から、背、横腹、臀、さらさら水をかけてはさすってくれる。
それがさ、骨に通って冷たいかというとそうではなかった。暑い時分じゃが、理窟をいうとこうではあるまい、私の血が沸いたせいか、婦人の温気か、手で洗ってくれる水がいい工合に身に染みる、もっとも質の佳い水は柔かじゃそうな。
その心地の得もいわれなさで、眠気がさしたでもあるまいが、うとうとする様子で、疵の痛みがなくなって気が遠くなって、ひたと附ついている婦人の身体で、私は花びらの中へ包まれたような工合。