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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

(ご免なさいまし、)といったがものもいわない、首筋をぐったりと、耳を肩で塞ぐほど顔を横にしたまま小児らしい、意味のない、しかもぼっちりした目で、じろじろと門に立ったものを瞻める、その瞳を動かすさえ、おっくうらしい、気の抜けた身の持方。裾短かで袖は肱より少い、糊気のある、ちゃんちゃんを着て、胸のあたりで紐で結えたが、一ツ身のものを着たように出ッ腹の太り肉、太鼓を張ったくらいに、すべすべとふくれてしかも出臍という奴、南瓜の蔕ほどな異形な者を片手でいじくりながら幽霊の手つきで、片手を宙にぶらり。

足は忘れたか投出した、腰がなくば暖簾を立てたように畳まれそうな、年紀がそれでいて二十二三、口をあんぐりやった上唇で巻込めよう、鼻の低さ、出額。五分刈の伸びたのが前は鶏冠のごとくになって、頸脚へ撥ねて耳に被った、唖か、白痴か、これから蛙になろうとするような少年。私は驚いた、こっちの生命に別条はないが、先方様の形相。いや、大別条。

(ちょいとお願い申します。)

それでもしかたがないからまた言葉をかけたが少しも通ぜず、ばたりというと僅に首の位置をかえて今度は左の肩を枕にした、口の開いてること旧のごとし。