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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

やがて二階に寝床を拵えてくれた、天井は低いが、梁は丸太で二抱もあろう、屋の棟から斜に渡って座敷の果の廂の処では天窓に支えそうになっている、巌乗な屋造、これなら裏の山から雪崩が来てもびくともせぬ。

特に炬燵が出来ていたから私はそのまま嬉しく入った。寝床はもう一組おなじ炬燵に敷いてあったが、旅僧はこれには来らず、横に枕を並べて、火の気のない臥床に寝た。

寝る時、上人は帯を解かぬ、もちろん衣服も脱がぬ、着たまま円くなって俯向形に腰からすっぽりと入って、肩に夜具の袖を掛けると手を突いて畏った、その様子は我々と反対で、顔に枕をするのである。

ほどなく寂然として寐に就きそうだから、汽車の中でもくれぐれいったのはここのこと、私は夜が更けるまで寐ることが出来ない、あわれと思ってもうしばらくつきあって、そして諸国を行脚なすった内のおもしろい談をといって打解けて幼らしくねだった。

すると上人は頷いて、私は中年から仰向けに枕に就かぬのが癖で、寝るにもこのままではあるけれども目はまだなかなか冴えている、急に寐就かれないのはお前様とおんなじであろう。出家のいうことでも、教だの、戒だの、説法とばかりは限らぬ、若いの、聞かっしゃい、と言って語り出した。