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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
まあ、お辞儀をお忘れかい。)と親しげに身を寄せて、顔を差し覗いて、いそいそしていうと、白痴はふらふらと両手をついて、ぜんまいが切れたようにがっくり一礼。
(はい、)といって私も何か胸が迫って頭を下げた。
そのままその俯向いた拍子に筋が抜けたらしい、横に流れようとするのを、婦人は優しゅう扶け起して、
(おお、よくしたねえ。)
天晴といいたそうな顔色で、
(貴僧、申せば何でも出来ましょうと思いますけれども、この人の病ばかりはお医者の手でもあの水でも復りませなんだ、両足が立ちませんのでございますから、何を覚えさしましても役には立ちません。それにご覧なさいまし、お辞儀一ツいたしますさえ、あの通り大儀らしい。
ものを教えますと覚えますのにさぞ骨が折れて切のうござんしょう、体を苦しませるだけだと存じて何にもさせないで置きますから、だんだん、手を動かす働も、ものをいうことも忘れました。それでもあの、謡が唄えますわ。二ツ三ツ今でも知っておりますよ。さあお客様に一ツお聞かせなさいましなね。)
白痴は婦人を見て、また私が顔をじろじろ見て、人見知をするといった形で首を振った。