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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

)と、きまりも悪し、もじもじ聞くとの。

(いんね、川のでございます。)という、はて面妖なと思った。

(山したの方には大分流行病がございますが、この水は何から、辻の方から流れて来るのではありませんか。)

(そうでねえ。)と女は何気なく答えた、まず嬉しやと思うと、お聞きなさいよ。

ここに居て、さっきから休んでござったのが、右の売薬じゃ。このまた万金丹の下廻と来た日には、ご存じの通り、千筋の単衣に小倉の帯、当節は時計を挟んでいます、脚絆、股引、これはもちろん、草鞋がけ、千草木綿の風呂敷包の角ばったのを首に結えて、桐油合羽を小さく畳んでこいつを真田紐で右の包につけるか、小弁慶の木綿の蝙蝠傘を一本、おきまりだね。ちょいと見ると、いやどれもこれも克明で分別のありそうな顔をして。

これが泊に着くと、大形の浴衣に変って、帯広解で焼酎をちびりちびり遣りながら、旅籠屋の女のふとった膝へ脛を上げようという輩じゃ。

(これや、法界坊。)

なんて、天窓から嘗めていら。

(異なことをいうようだが何かね、世の中の女が出来ねえと相場がきまって、すっぺら坊主になってやっぱり生命は欲しいのかね、不思議じゃあねえか、争われねえもんだ、姉さん見ねえ、あれでまだ未練のある内がいいじゃあねえか、)といって顔を見合せて二人でからからと笑った。