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ましょうのおんな
魔性の女
大倉 燁子
「マスコット 一巻七号」1949(昭和24)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,898 字 · 20 页
本庄は膝の手を払い退け、肩を聳かせながら、
「その恩があると思えばこそ、今日まで出来ない我慢をしつづけてきたんだ。が、もう辛棒が出来なくなった、君のうるさい深情けは僕を気狂いにさせる。痒いところに手の届くような献身的なつとめぶりは全く有難迷惑で胸がむかむかする。君と一緒にいると僕は頭が変になって、どうかなっちゃいそうな気がする。君の毒針で刺すような凝視にはもう堪えられない。僕は君から完全に解放されて、自由の天地に大きな呼吸を吐きたいんだ。眼に見えない君の云う霊とかに縛られて、自由を失っているようないまの生活がつくづくいやになった。別れよう。それよりほかに僕の生きる道はないんだ」
「あなたと別れては、私は生きていかれないわ」
「生きてゆかれるだけの物を君にやる」
「全財産でしょう? オホホホホそんなもの、私はあなたが欲しいのよ。あなたの体も、心も、全部を私に頂きたい」
本庄は手にしていた盃をぱっと彼女の顔に投げた。
「いい加減にしろ」
「私の希望をのべているのよ」
彼はカチカチと歯を鳴らしながら、
「悪女の深情けとは君のことだ。僕は普通の女が好きになった。掴まえどころのない霊だとか、心霊だとかにたぶらかされて、人の秘密を探ろう探ろうとしたりする女は大きらいだ」