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ぎょもん

魚紋

吉川 英治

「冨士 臨時増刊号」1936(昭和11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,582 字 · 30 页

青空文庫

二人で組んで、和尚鉄の金を、山分けにしてもいい。お可久へも、おれはもう手を出さねえから、生命だけは助けてくれ』

薊からそう聞いて、かまきりは、初めてこの頃の事態が頷けた。そして、百両で自分を操ろうとした山岡屋を憎んだ。

『そうか、じゃあ今の話に、嘘はねえな』

『嘘だと疑うなら、これから山岡屋へ行って、二人で坐りこんで対決してもいい』

『おもしろくなった。薊、もう安心して出て来るがいい。実は、山岡屋から殺してくれと頼まれて、汝に、喧嘩仕掛を吹ッかけたのだが、もうやめて、その代りに、和尚鉄の金には、俺の息もかかっていると思ってくれ。百や二百の頒け前じゃ承知しねえぞ』

『いいとも、生命さえ……。ああ、冗談じゃねえ、あぶなく死神に取ッ憑かれるところだった』

『今の話を、もうちっと詳しく聞きてえが』

『いくらでも話すが、おら、もうこんな寂しい所じゃ』

『大丈夫だって云うのに、何も好んで人殺しなどはしたくねえ。ただ、その七百両の一件だが』

『蛤鍋屋へでも行って、飲みながら話すとしよう。こう、襟くびが、何時までもぞくぞくしやがっていけねえ』

『口ほどもねえ悪党だ』

『こう見えても、おら、割合に気が小いせえんだ』