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ぎょもん
魚紋
吉川 英治
「冨士 臨時増刊号」1936(昭和11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,582 字 · 30 页
三
そっと、ふた段、三段と、跫音をしのばせて、梯子段の途中に凝と立っていた。
三
『ほんとに、和尚鉄がそう云ったのか』
『へい』
『いつ召捕られたんだ』
『伝馬牢へ下げられたのが、後月の八日でした』
『すると、お前さんは、その和尚鉄に付いている牢番なんだね』
『夜昼、一日措きに、番代りがおりますから、他にまだ二人ほど相役が居りますが、その者たちには何も打明けてはございません。和尚鉄が、私にだけ話した事なんで』
『ふーむ。……何か証を持って来たかい』
『手紙を持って来ました』
『よく御牢内でそんな物が書けたな』
『それやあ、私が、そっと都合をつけますからね。……今夜は、私は非番なんで、実は、こっそりお訪ねに上ったわけで』
濡れている着物の懐中を探って、牢番の男は、一通の手紙をさし出した。
山岡屋才助は、行燈をよせて、
『ム……。こいつあたしかに、坊主の鉄雲の筆だ。あの偽和尚も、ずいぶん悪事をかさねたから、もう年貢にかかってもいい頃だろう』
『ですが、残念がって居りますよ。折角、一生一度の大仕事をやった所で、縄になっちゃあ何にもならないと云って』
『此の手紙には、詳しい事は、使の口から聞いてくれとあるだけだが、先刻は、藪から棒の話なので、半信半疑に聞いていたのだが、一体、小判で七百両の金を、何うしたって云うのか。