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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

「ウーム、似ている」

「生うつしだ!」

と、小声を重ねて、不審がっていた末、

「場所がここでなければ、どんな姿をしていようと、無論、有無をいわすのではないが……」と、ひとりが呟いた。

「役儀がら糺してみなければ気がすまぬが、まさか、松平家の茶荘に、女掏摸がアアしている筈はないからの」

「しかし、念のため、人違いにしろ一応……」と一人が懐疑の誘惑にやまれぬように、とうとう、庭下駄をはいて、お千絵の姿を、もっと間近から見なおそうとした。

ところが、そこへ、左京之介が見えられたという知らせである。で、茶荘の用人が、すぐ別席へと案内に立った。

庭に出ていた者は、あわてて席へ戻り、ひとりのほうもちょっとうろたえて、ひろげていた人相書を振分の下へ挟んでそこへ置いたまま、所司代と逢うべき密室へ通されて行った。

左京之介が待っていた。

智慧伊豆信綱の血をひいている人だけに、どこか才気煥発の風がある。それに今度は、難治の京都へ移って、所司代の要務をみることになったので、かれは寝るまもない忙しさに追われながら、一面得意でもあった。

ふたりは、その前へ、窮屈に手をつかえて、

「南町奉行付の与力、中西弥惣兵衛でございます」