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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

流々転住

「――今のような場合でなければ、弦之丞様の居所を、ほんとに教えてあげたいのだけれど」

こうつぶやいて、ほろりとした。

流々転住

ここに哀れをとどめたのは、紐の男――仲間の宅助だった。

おのれの使命に、あまり自信をもち過ぎた結果、鼠薬を舐めさせられて、もろくも、お米にまかれてしまったが、どうにか、命だけを取り止めて、ひょろひょろと、場末の木賃宿からよろけだしたのが、お米に離れてちょうど七日目。

持ちあわせの小遣いも尽きて、もう一晩の旅籠銭さえなくなったため、まだヨロつく足をこらえ、時々、渋るように痛む腹をおさえて、青い顔をしながら宿を出た姿は、笑止でもあるが、気の毒でもあった。

「見ていやがれ、阿女め」

腹の渋りだすたびに、口惜しさが新たになってくる。そして、まだ腹の中に残っている鼠薬の余薬に、火でもついてくるように、かれのまずい面が歪んでくる。

「覚えていやがれ、タダおくものか」

こうつぶやいては、宅助、ペッ、ペッ、と生唾を吐き、目ばかり鋭く動かして、よろよろと道を泳いだ。

無論お米を見つけだす気で――。

どこをどう歩いたか、何を的に探したか、自分でも夢中らしい。