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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

で、そのために、万一を思って、この手紙にも居所を書かないが、自分は今、今の潜伏している場所を出るために、鳴門の渦潮をのがれ出た時以上の苦しみをしているという消息。

「ウム、なるほど」

伊太夫はうなずいて次へ移った。

――しかし、ここまで来て、いつまで躊躇してはいられない。隙をうかがって勇敢に江戸へ向って立とう。

日は、およそ××日。

落ちあう場所は――大阪から河内裏街道をとって大津へ迂回するつもり――その方が人目に立つまいと思う。で、途中の禅定寺峠を待ちあわす場所と定めておく。

どっちが早くとも、必ず、一方の来るを待つこと。

早駕三挺ご用意。十分に酒代をくれ、道中肩つぎなし、なるべくは通し約束、賃銀にかけかまいなく、足ぶし腕ぶしの達者をえらんでおくこと。

等、等、等、なおさまざまにわたるしめしあわせであった。

日の来るのを待つらしく、酒のみの堀田伊太夫、ロクにない浪宅の道具を片っぱしから屑屋に売っては、気前よく酒をのんでいる。

その朝は、いきなりお千絵に猿ぐつわをかけて、押入れに押しこみ、板戸の外から錠をおろして戸外へ出かけた。

黄八丈に襟かけの丹前、茶いろになった白博多へ、ボロ鞘の大小を落してはいるが、江戸へ帰りゃあという意気がある。