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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

中に巻きこんである別な手紙があった。それは、中西弥惣兵衛が勧修寺の池のほとりで、挙動のあやしい非人をとらえて糺してみた結果、思いがけなく手に入った、旅川周馬の筆跡である。

「さては」

左京之介は二つの文面を読みくらべて、

「お千絵をかどわかしたのも旅川の指し金であったと見える。おお、しかも明日は、禅定寺で待ちあわせて」

「な、なんでござりますと? ――」鴻山は待ちきれずに膝を進めて、同じ所に目を辿らせた。

「やっ、周馬め、秘帖をつかんで江戸へ」

「ウム、そうなっては、弦之丞の立場があるまい」

「ござりませぬとも!」

鴻山は暗然と――強く、

「すぐに、早飛脚を立てて、この手紙のままを、万吉の家へ廻して急を知らせてやりとう存じます」

「よかろう、さっそく、取り計らっておくように」

「承知いたしました。では、一刻も早く」

「待とう」と、ひき止めた。

「は」

「お千絵のほうは?」

「――なんとも心がかり、拙者自身で、山科の伊太夫とかいう浪人の家へ出向いて見ることにいたします。いずれ、安否はまた途中から使いを立てまする」

周馬の筆跡を状筥に厳封して、早飛脚を大阪の桃谷に立たせ、かれ自身はひとりで、いつもの深編笠、山科の村へ入って、堀田伊太夫というものの住居を探り歩いた。