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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

いいか!」

荒っぽく格子を閉めて外へ出ると、三人の中でお十夜らしい声が、

「――年増だが、万吉の女房にしちゃ、もったいないような女じゃねえか。一角に撲られて、キッと、溜め涙でこらえていた姿が、なんとも俺にゃ色っぽく目に映った」

「いやな奴だ!」

と、天堂一角の笑い声がする。

「じゃ、お十夜、吾々はひと足先へ安治川屋敷へ帰ってやるから、貴公、これから一人で、お吉を慰めに戻ってやったらいいではないか」

周馬の猥らな声など――ふざけあいながら、だんだん遠くなって行った。

嵐の去った跡のように、シーンとなった万吉の留守宅には、狼藉に取り散らかされたものの中に、お吉が箪笥の鐶によりかかって、ほつれ毛もかき上げずに、いつまでも今の口惜しさにおののいていた――が、気丈な女、泣いてはいない。

「み、みておいで! 今に……」

真ッ青になった頬に、一角の打った手形だけが桃色になっていた。その口惜しさと痛みにおののきながら、こうつぶやいて、お吉が、脚の折れた珊瑚の珠を目の前に見つめていると、

「おばさん……」

静かに呼ぶ者があって、中二階の梯子段に、緋縮緬の燃える裾と、白い女の足もとだけが見えた。