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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
先生、いま一盃はじめたところです。
よかろう、青年は元気をつけねばいかん。
はっ――。
そこで瓶盞を改め、先生に集中攻撃を喰わした。佐々木彦三郎は、学友達が酔ったはずみになにか喋ってはまずいと考えて、手洗場へ行くふりをして、縁側へ出で二階から、例の詩の書いてある丸めた紙を懐から出し放った。擲った紙は、墻を越えて隣の家の庭へ落ちたのである。
先生と学生らは、夜半まで痛飲して、蹌踉として帰って行った。
隣の家は、芸妓置屋である。六十に近い老女が主人で、数人の妓を抱えて置くが、なかに最も美しい、若い妓は、老女の実子である。つまり娘だ。幼いときから雛妓として仕込んだけれど、賎業の方は固く禁じていた。だから芸妓であっても生娘だ。
この花街では、この娘を誰が手折るであろうということが評判になっていて、ひく手あまたである。ところが母も娘もまるでそんなことはとりあわず恬然として弾きかつ歌うのが専門であった。
名は小みどりと呼び、三絃、笛、太鼓はもちろんであるが、婦芸一般に精をだし、書を読むことも人後に落ちない。そして麗容薔薇を欺くというのであるから、大したものである。