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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
と、いうと若い記者は驚いて私の顔を見上げた。
「分からんね君は、ここは僕の机なんだよ」
こう荒々しくいうと、若い記者は怪訝な顔して露台の方へ出て行った。
そこで私は、その机へしがみついて動かばこそ。誰も相手にしなかろうが、冷たい眼で見ようが関せずと構えて、朝はほかの記者の出勤前から夜半は組版が下のステロ場へ下りるまで頑張った。
それまで見て見ぬ振りしていた村上編集局長が、ある日私の前へきて、
「君、君はもう社をやめたのじゃなかったのかね」
と、まことに静かにいうのである。
「いえ、僕はやめません。辞表をだしたことはないと思います」
「そうかね、でも君は社の方ではやめたことにしてあるがね」
「そうですか、でも私はまだ解職の辞令を受け取っていません」
「そうだったかね」
こういって、村上さんは自分の室へ行ってしまった。
そうこうしているうちに、幸徳秋水の大逆事件の検挙がはじまった。編集局は猫の手も借りたいほどの多忙である。
そのどさくさ紛れに、私はまたもとの報知新聞記者になったのである。