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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页

青空文庫

二日目は、暁暗の頃から人夫らは工事場へやってきた。

そして、しばらく榾火を焚いて一服すっているうちに、東が明るくなってきたところが、人夫らが掘り掛けの井戸を覗いていると、薄暗い底の方へ、なにか黒いものが動いているではないか。

大騒ぎとなって、二、三人の人が梯子をかけて井戸の底へ降り行き、黒い犬のような動物を押さえつけて見ると、なんとこれは大きな狸である。

首と四ッ肢を縄で括りつけ、その日は一日、樹の又へ縛りつけて置いて、その夜工事場の人員全部が集まって、大鍋でたぬき汁をこしらえ、濁り酒で腹鼓をうった。

こんな次第で、文明開化の今日でも、榛名山麓へは、狸が時々散歩に出てきて、失敗を演ずるのである。

四

分福茶釜の出身地も、榛名山麓である。

上州館林在の茂林寺に、この分福茶釜が鎮座ましますのであるが、詳しくいうと上州邑楽郡六郷村字堀江青龍山茂林寺であって、開祖は正通和尚であるという。正通和尚の出身地は分からぬ。

正通和尚は諸国行脚の途次、上州へ入り榛名山麓の村々に布施を乞うて歩いたが、ある日の夕ぐれ、湯の上村から伊香保温泉の方へ向かっていた。

すると、路傍の樹かげの石に、僧形の少年が憩うていたのである。