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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
遠くは武州と甲州にまたがる奥秩父の連山が、十重二十重に霞の奥の果てまで連なっている。近きは紫紺に、遠きは浅葱色に、さらに奥山は銀鼠色に。
甲武信か国師か雁坂か、武甲山か三峰か、いずれがどれとも名は分からないが、奥秩父の高山が東へ向かって走ったその奥遙かに、奥多摩の雲取山が銀鼠色に、淡く煙って見える。太い平らな胴を台にして、熊の爪のように並ぶ三、四の小峰は、あれは雲取山の頂に違いない。
これで、上州の平野から眺望する四辺の山々に、眼を一巡させたが、秩父の連山はさらに東南へ低く伸びて、武州児玉郡か北埼玉郡の草野のなかに、裾を没している。
そこはもう、広茫たる関東平野だ。秩父山の消えるところと、野州の連山の消えるところのわが村から指して東南の一隅には、全く山を見ない。夏は、その地平線から白い雲が湧き、冬は灰色の浮雲が、その地平線に吸い込まれて行った。
上州の東南地方から武州、下総国かけて一望、眼を遮るもののない大平野である。一つの小山もなく、青い田と畑が、際限なく押し広がっている。この平野の尽くるところの海辺に東京の街がある。前橋から二十八里。
大正十二年九月一日の夜、大震災の火の手はいよいよ逞しく、東京の下町を殆ど焼き尽くしたが、天を焦がす猛火の反映が、燃ゆる雲となってむらがり立ち、関東平野の西北端にある赤城