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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页

青空文庫

そういうわけであったか。何も知らぬこととて悪かった。僕は前言を取り消す。

二

いよいよ、羆の肉を小石川春日町のさる支那茶館へ持ち込んだ。

私は幼いときから熊とは縁が深い。私の父は茶人であって、私がまだ十歳位のころ、秩父山の方から、一頭の子熊を買ってきた。丸々と肥っているが、大きさは子犬ほどしかない。首輪をつけて、庭の木に繋いで置くと無邪気に戯れて、まことに可愛いのである。ところが二、三ヵ月たつと次第に育ってきて、親犬ほどになると時たま野性を発揮して、人を襲う態度を示すので、村中の問題となった。飼主は可愛いから何とも思うまいが、野獣が村内にいるというのは、村民の脅威である。いつ誰に、危害を加えぬものでもあるまい。早く、なんとかして貰いたい、という抗議がでた。

そこで、父はまことに尤もだと答えて、通りがかりの香具師に呉れてやってしまったことがあるが、そのとき私は子熊に別れるのがつらさに、涙を流したのを記憶している。

その後、上州薮塚温泉の背後に連なる広沢山の横穴で捕獲した穴熊の肉を食ったことがある。これは肉がやわらかの上に、脂肪が豊かで甚だおいしかった。