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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

その夜、――夕飯のあとで、茂次は子供たちと初めて話をした。おゆうの書いた人別書を見ながら、一人ずつ呼びかけ、火事のことにはいっさい触れず、これからどううまくやってゆくか、ということについて話した。口がへたなうえに、ぶっきらぼうな話しかたであるが、子供たちには却って気持がつうじるようであった。

菊二、十一歳、しらかべ町

六、九歳、あいおい町

重吉、九歳、同町代地

又、八歳、としま町

梅、八歳、さくま町

伝次、七歳、りゅうかん町

市、六歳、おしょろさんの裏

あつ、四歳、同所

人別書には右のように書いてあり、その住所はおりつがいちおう慥かめたと云った。逃げた五人の中には、住所を偽った者や、はっきり云わない者もいたが、残った者は正直に云っているという。茂次は「おしょろさんの裏」というのがわからなかった。おりつもそれだけはわからない、市はそれだけしか覚えていないし、あっちゃんとは近所同志らしいが、あっちゃんも「おんなじとこ」と云うだけだそうで、おぼろげな記憶を訊きだしてみると、どうやら大川の向うのような感じがする、とおりつは云った。

「それならいちど伴れていってみるんだな」