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やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页
女が男の性質をみぬく勘は、生れつきそなわったものだろうか、わたくしはそう思ってからすっかり心がおちつき、夜半あの方がはいって来ても、ひや汗をかくような恐怖心は起こらなくなった。あの方は夜半にしか来なかったし、わたくしは懐剣を膝の上に置いて坐り、なにを云われても返辞をせず、黙って、あの方の眼をまっすぐにみつめていた。ときには一刻以上も、くどいたり威したり、泣き言を並べたりするが、わたくしの心は微動もしなかった。
祝言の日から約四十日、こんな生活が続いたが、三月下旬になって、あの方はおとうさまから勘当された。
詳しいことは聞かされなかったが、結婚してからも放蕩がやまず、諸方に借金を溜めたうえ、無頼ななかまと喧嘩をして、相手を二人か三人傷つけたというようなことだけは、とめという小間使が話してくれた。おとうさまの怒りは非常なものだったらしい。勘当と同時に領内をたちのけと命じ、細貝家から除籍したことを、正式に係りへ届け出た。これはあとで聞いたことだが、あの方は家を出てゆくとき、手文庫にあったお金と、おかあさまの持ち物で、かねめな小道具をすっかり持ちだしたそうである。