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ゆうれいかしや
ゆうれい貸屋
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页
そして彼は額の瘤を撫でた、「現の証拠はこのとおり、ゆうれいになってもあっしのような男はこのとおりでやす、見ておくんなさい、このでけえ瘤を、もうたくさんでやす、ほほほほ、たくさんでやす」
また爺さん婆さんの幽霊は、寝てばかりいた。爺さんは疝痛持ちだし、婆さんは喘息で、今夜は冷えるとか、湿気が強いとか風邪けだとか云って、依頼者があってもなかなか動かないのである。娘の幽霊の一人は実直者で、いちばんよく働いたが、これは半月ばかりすると、
「身内の者が供養をしてくれて、こんど成仏することになりましたから、わたしはこれでお暇を頂きます」
こう云って消えてしまった。
そのすぐあとのことだったが、前紙履買いでないほうの男の幽霊が、派出先から声をからして、ふらふらになって帰って来た。ぜんぜん声がかれてしまって、云うことがよくわからない、手と首をしきりに振って「もう御免だ」という表現をした。
「いってえどうしたんだ、なにがあったんだ」
「ゼエゼエ、……ゼエゼエ、……ゼエゼエ」
まるっきり、やにの詰ったきせるであった。弥六が彼の口へ、耳をくっつけて聞いたところによると、先方は肥えた五十男だったが、ぐうぐう鼾をかいて熟睡、いくら「うらめしや」