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ゆうれいかしや

ゆうれい貸屋

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页

青空文庫

「た、た、た、そいったあれが、あいつが」

「あれがねェ、あれがおまえに抱きついて、手足を絡んで、云ってたーねー」

そしてお染ゆう女は、悪鬼のように伸びあがり、総髪を逆立て、歯を剥きだして陰々と笑った。

「あーらうれしや、これで怨念の相手が出来しぞ、とり殺す相手が出来たるぞ、うれしやうれしや、これよりは九百九十九夜、夜毎日毎に枕辺へあらわれ、塗炭の苦しみを嘗めさせて、うーらーみ……はーらーさーでえ……おーくーべーきい……かー、あーらうらめしやな……」

「助けてくれ、このとおりだ」

弥六は平伏し、叩頭しながら叫んだ。

「おらあ死にたくねえ、助けてくれ、死ぬなあいやだ、勘弁してくれ、人殺し」

「弥六、どうした、弥六、しっかりしろ」

背中をどしんと叩かれた。弥六は悲鳴をあげ、とびあがると、誰かの頭とこつんこをし、眼からちかちかと光が飛んで、そうしてまた背中をいやというほど殴られた。

「こんな時刻まで寝こんで、なにをうなされてやがるんだ、ふざけるな、眼をさませ、どうしやがった、弥六」

「はア、……はア、……」

弥六は、ぽかんと振り向いた。家主の平作がそこにいた、戸があけてあり、外は夏の明るい日がいっぱいに漲っていた。