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ゆうれいかしや
ゆうれい貸屋
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页
三 夜なかの宴に酒と蒲焼
「あんたはわけを知らないから、そんな薄情なことを云うんだわ、男ってみんなそうよ、みんな薄情の不人情のけだものだわ」
「怒ったってしようがねえ、おれに怒ったってよ、……おめえ誰かに騙されたてえわけか」
「騙されたもなにも」
ゆう女はこう云いかけてそこへ坐った、「口惜しくって、口惜しくって、男なんて本当にみんな、不実でろくでなしで浮気者で、ひいっ畜生、どうしてくれたらいいだろう」
「それあおめえ、なんだ、そんなに口惜しかったらおめえ、その相手の所へばけて出てよ、そいつをとり殺すなりなんなり」
「やったのよ」
ゆう女は身もだえをした、「云われなくったってそのくらいのことはやったわよその男をとり殺したばかりじゃなく、その男の一家一族みんなとり殺してやったわ」
「そんならなにも、それでいいじゃあねえか、それで文句はねえ筈じゃねえか」
「文句なんかありゃしないわ、文句なんかないけれど、もうとり殺す相手はないし、あたしは怨念のゆうれいだからうかばれないし、宙に迷ってゆきばがなくなっちゃったのよ」
三 夜なかの宴に酒と蒲焼
「なるほどね、へえー、そんなぐあいのもんかね、ふう、そいつはその、ゆきばがないとは、おれも知らなかったなあ」